AIの提案を「企業として採用できる判断」へ――AIアシュアランスが進める、検証可能なAIガバナンス(海外リリース有)
広島AIプロセスの理念を、判断条件・証拠・実行前の検証へ。責任OSの公開成果と、広島企業との社会実装に向けた取組。
AIが優れた提案を出すことと、企業がその提案を正式に採用・実行できることは、同じではありません。納期、品質、安全、契約、利用権限。AIの回答がどれほど合理的でも、業務には満たさなければならない条件があります。条件を確認した証拠は何か。誰が、どの範囲で採用できるのか。条件が変わったら、何を再確認するのか。株式会社AIアシュアランスは、この「提案から採用・実行へ」の境界を、検証できる技術にするため、責任OS(Responsibility OS)の研究開発と公開検証を進めています。 その成果を、広島企業との共同構想や、国際的なAIガバナンスの議論につなげようとしています。今回の取組や技術成果は、オンザリンクス社による以下の日英リリースでも紹介されました。関連発表|オンザリンクス社による発信
本稿では、当社が今回のカンファレンス向けに開発・公開した技術成果や、広島企業との社会実装に向けた取組を中心に取り組みを紹介します。

1. 私たちが解こうとしているのは、AIの「採用判断」の問題
例えば、複数の物流会社がAIを使って共同配送計画を作るとします。AIが全体の輸送費を下げる案を出したとしても、一社の負担上限を超えたり、医薬品に必要な温度管理条件が満たされなかったり、最終承認が得られていなかったりすれば、その計画を実行してよいとは限りません。ここで問うべきなのは、AIの推論が正しかったかだけではありません。「その判断を採用する条件が、必要な証拠によって確かめられているか」という問いです。そして、承認済みの条件が後から変わる、別の企業へ判断が引き渡される、別の制度に関わる業務へ転用される、といった場合に、以前の判断を無条件に使い回さないことも重要です。当社は、こうした問題をAIのモデルやアプリケーションごとの個別対応に閉じず、条件・証拠・利用範囲・実行可否を結ぶ共通の技術課題として捉えています。
2. 責任OSが目指すもの――「正しそう」から「条件を確認できる」へ
当社が開発している責任OSは、AIなどの提案を組織が採用する際に必要となる条件と証拠、判断の利用範囲、履歴を結び付けるための技術基盤です。考え方はシンプルです。
条件を定める。 何を満たせばその判断を採用できるのかを明確にする。
証拠を対応づける。 その条件を確認するために必要な情報、版、適用範囲を特定する。
採用前に確かめる。 条件が不成立、または必要な根拠が不足していれば、無条件に実行へ進めない。
再確認できる状態を保つ。 何を根拠に判断したか、条件変更後に何を再検証すべきかを追跡できるようにする。
ここで重要なのは、AIの提案をすべて止めることではありません。採用できる条件を明確にし、条件を満たした判断は業務へ進めることです。ただし、実際の検査器が正しく動くか、元データや承認が真正か、実行経路が検査を迂回できないかは、モデルとは別に確認する必要があります。公開している数学的成果を、そのまま実システム全体の保証と言い換えることはしていません。
3. 技術はすでに公開している――Lean 4の定理とPoC接続
当社の取組は、構想の公表だけではありません。ソース、成立条件、検証手順を外部から確認できる形で公開しています。
国内:AI事業者ガイドラインと責任OS
「Responsibility OS × AI事業者ガイドライン」では、日本のAI事業者ガイドラインの一部の技術的論点を、当社の独立した公開抽象モデルに対応づけています。たとえば、所定の前提の下で、判断の根拠が複数の主体をまたいでも利用範囲が勝手に拡大しないこと、実行より前の受理済み再検証に遡れること、条件変更だけで古い実行許可が復活しないことを、Lean 4で扱っています。2026年10月11日には、固定した公開コミットで、既存のマッピングと追加のアシュアランスケースの双方がGitHub Actionsの検証に成功しました。これは明示された前提を持つモデルに関する証明であり、ガイドライン全体の準拠認定ではありません。[1]
国際的な接続:広島AIプロセスとEU AI Act
「Hiroshima AI Process × Responsibility OS × EU AI Act」では、制度間で共通に扱える技術要件と、移転先で追加確認すべき要件を区別する公開モデルを開発しました。ある枠組みで必要な条件を確認していても、別の枠組みで必要な文書や監視計画が不足していれば、そのまま合格扱いにはしません。これは、各国の法制度を同一視するのではなく、何を再利用でき、何が未確認なのかを明確にする発想です。固定したコールドチェーンPoCの実際の関数と接続し、合成データによる記録をLeanモデルと照合する仕組みも公開しています。2026年10月10日の公開CIでは、Leanの検査、Pythonの18テストメソッド、PoC接続、具体的記録の照合が成功しています。[2]もちろん、PoCの結果や形式証明だけで、EU AI Actへの法的適合や実運用の安全性が証明されたわけではありません。一つの判断を、誰が、どの条件で採用してよいか。どこまでは証明済みで、どこからは追加の確認が必要か。 その線引きを公開していることが、当社の技術的な出発点です。
4. 国際的な原則を、業務の証拠につなぐ
この技術を広島AIプロセスの文脈で展開するのには理由があります。2023年の広島AIプロセス国際指針は、安全・安心で信頼できるAIに向けた共通原則を示す一方、各国・地域による実施の仕方に違いがあることを認めています。[3]2026年3月には、フレンズグループとパートナーズコミュニティの活動を示すアクションプラン2026が発表されました。OECDは同年5月、幅広い企業の参加を促す広島AIプロセス報告枠組みVersion 2.0を公表し、G7デジタル・技術閣僚宣言でも関連の取組が取り上げられています。[4][5][6]これらは政策と報告の枠組みです。一方、当社が開発しているのは、具体的な業務の判断条件と証拠を、実行前の確認につなぐ技術です。両者は同一ではありません。しかし、ガバナンス上の取組を説明する文書と、個々の判断で実際に何を確認したかという技術的な記録を結び付けられれば、企業は自らの管理体制を、より検証可能な形で示せる可能性があります。「原則に賛同している」だけでなく、「この条件を、この証拠で確認した」と説明できること。 私たちは、そこに国際的な共通基盤の意義があると考えます。
5. なぜ広島の製造業・物流と取り組むのか
製造業・物流には、企業ごとに目的・制約・権限が異なるという特徴があります。共同配送一つをとっても、納期、原価、容量、品質、承認が企業間で異なるため、AIの提案をそのまま共有すれば済むわけではありません。当社は2026年9月、オンザリンクス社と「検証可能なフィジカルインターネット」構想を発表しました。既存システムや各社の目標を一つに統一するのではなく、各社の採用条件を共有する考え方(Beacon)と判断を受け渡す仕組み、検証層を組み合わせ、共同物流に必要な条件を確かめる構想です。詳細な業務データの直接共有を必須としない設計を目指しています。[7]この構想は、国土交通省・経済産業省によるフィジカルインターネットの検討とも、企業間連携という課題を共有しています。ただし、政府のロードマップが当社の特定方式を採用したという意味ではありません。[8]また、オンザリンクス社は10月14日、「製造業AI物流カンファレンス2026 in 広島」を主催しました。広島AIアシュアランス協議会(HAAC)が企画協力し、当社は技術開発・技術協力の立場で関わりました。オンザリンクス社が発行した実践ガイドにも当社は技術協力しています。今回の2本のリリースは、こうした関連の取組を同社から発信したものです。[9]
6. 一つの業種だけで終わらせない――HAAPという構想
広島AIアシュアランス協議会(HAAC)は、広島AIプロセスの理念を社会実装につなぐ民間・独立の協議会です。オンザリンクス社が代表組織を務め、当社は発起・技術協力を担っています。HAACは広島AIプロセスのパートナーズコミュニティに参加しています。[10]HAACが整備を進めている共通プロトコル案が、Hiroshima AI Assurance Protocol(HAAP)です。特定のAIや通信手段を置き換えるのではなく、判断の採用条件、証拠、検証結果、採用状態、状態遷移の許可などを、相手にも再検証できる形で扱う共通レイヤーを目指しています。[11]当社の責任OSや形式検証の研究は、その構想に技術的な根拠を提供し得るものです。ただし、HAAPは現時点で提案段階であり、国際標準として成立したものではありません。公開済みのPoCが、HAAPの将来の正式な記録仕様を実装済みという意味でもありません。物流は重要な実証領域ですが、狙いは物流専用の制度を作ることではありません。AIエージェント、製造、公共サービスなどで条件は異なっても、条件・証拠・採用の可否を検証可能にするという課題は共通して現れます。HAACや当社は、この共通部分を産業横断的な技術として発展させたいと考えています。
7. 企業にとっての価値は、これから実証で測る
当社が想定する導入価値は、単に「AIを安全にする」という抽象的な説明ではありません。
確認作業の効率化: 既に確認した条件と、追加確認が必要な条件を区別し、同じ説明を繰り返す負担を減らせるか。
取引先との信頼形成: 判断の根拠や利用範囲を相手が再検査でき、調達・監査・共同事業の判断に役立つか。
新しい事業基盤: 業種別の条件設定、検証基盤の導入、継続的な再検証を事業として提供できるか。
これらは期待する価値であり、達成済みの削減率や収益ではありません。実証では、確認工数、条件不一致の検出、再検証の所要時間、導入先での運用負荷などを測る必要があります。私たちが掲げるのは、AIの利用を止めるための技術ではなく、採用できる条件を明確にすることで、企業が安心してAIの判断を業務に取り入れられるようにする技術です。
広島から、検証できる技術を日本と世界へ
日本が主導した広島AIプロセスの理念を、産業で使える条件・証拠・検証手順へ。そのために当社は、責任OS、Lean 4による形式検証、公開PoCとの接続に取り組み、再検査可能な成果を公開しています。オンザリンクス社との連携は、その技術を製造業・物流の現場課題と結び付ける取組です。HAACのHAAP構想は、そこから分野や組織をまたぐ共通の検証方法へ発展させる試みです。「誰が安全だと言ったか」だけに頼らず、「何を、どの条件と証拠で確かめたか」を示せる社会へ。株式会社AIアシュアランスは、研究開発と実証を積み重ね、その実現を目指します。技術レビュー・共同実証のご相談(株式会社AIアシュアランス)
一次資料・公開成果
[1]株式会社AIアシュアランス:責任OS × AI事業者ガイドライン。対象コミット 8aa2063b55920e05ffc9efe7ad5767a49a957d7e。ソースと説明 / 公開CI[2]株式会社AIアシュアランス:広島AIプロセス × 責任OS × EU AI Act。対象コミット a479ee97a4f73769ae90bb19b7329e9711fabbd2。ソースとPoC接続 / 公開CI[3]G7:広島AIプロセス国際指針(2023年10月30日)。外務省掲載・原文PDF[4]外務省:広島AIプロセス・フレンズグループ第2回対面会合(2026年3月16日)。アクションプラン2026の公表を含む。公式発表[5]OECD:広島AIプロセス報告枠組みVersion 2.0(2026年5月28日)。公式発表[6]G7デジタル・技術閣僚宣言(2026年5月29日)。英国政府掲載・宣言全文[7]オンザリンクス社・株式会社GhostDrift数理研究所(現・株式会社AIアシュアランス):検証可能なフィジカルインターネット構想(2026年9月9日)。共同構想の発表[8]国土交通省・経済産業省:フィジカルインターネット・ロードマップ(2022年)。公表ページ[9]オンザリンクス社:製造業AI物流カンファレンス2026 in 広島・日英の発信(2026年10月28日・29日)。海外向けリリース / 国内リリース[10]オンザリンクス社:HAAC設立・活動方針の発表(2026年10月8日)。公式発表 / 総務省・パートナーズコミュニティ[11]HAAC:HAAP / Non-Normative Technical Overview。プロトコル構想の技術概要本稿は株式会社AIアシュアランスの取組を説明する記事です。制度との対応は当社による独立した技術的な解釈であり、特定技術への政府・G7・OECD・AISIによる認証・承認を示すものではありません。掲載した証明・PoC・事業化構想の成立段階と範囲はそれぞれ異なります。公開資料確認日:2026年10月29日。



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